
パネライというブランドは1860年からという、結構古めのブランド。
イタリアのフィレンツェで生まれ、イタリア海軍などに特殊時計を卸していた過去があり、
それが今のパネライの時計作りの基礎になっています。
ラジオミール、ルミノールと基本となるシリーズは2つしかない、珍しい企業戦略をもつブランド。
2000年代中頃までのパネライは一流ブランドのムーブメントを搭載したモデルを販売していて、
現代ではその過去の作品が非常に高値で取引されています。
そのころまでパネライは殆ど他社の汎用ムーブメントを独自に改良したものを使用していて、
ETA社からのムーブメント供給停止などの理由などから、独自でムーブメントを生み出すという道を選びました。
いわゆるマニュファクチュール化。
ガワも中身も自社で一貫して時計を作る体制のことをそういいます。
そのころからパネライは変わってきました。
ムーブメントを自社で作るようになってから、パワーリザーブの時間がどんどん長くなり、今では10デイズのモデルが存在する。
さらにムーブメントは小型化、薄型化され、それによってパネライの新作や後継機はどんどん薄くなっている。
さらには独自に機能を追加したムーブメントを作りやすくなったため、いろいろな機能、機構を詰め込んだムーブメントを、
自動巻き、手巻きと使い分けれるように作っている。
そういった理由などから、パネライの腕時計はどんどん薄型化、オシャレ化していて、
これまでのパネライとはどんどん雰囲気が変わっています。
ETAなどからムーブメント供給をストップされ、現在に至るわけですが、
災い転じて福となす
という感じ。
もちろん過去に残した名作コラボはいくらかすごくかっこいいのがあるんですが、
現代のパネライのラインナップには目を見張るものがあります。
どれもモダンながらも伝統をまったく崩さず展開しているのでこれまでの固定のファンは残しつつ、
新たな顧客をどんどんゲットしています。
昔のデカ厚ウォッチが少なくなっているのは少々残念な気はするんですが、現代の基準でデカ厚はまだ残っています。
あとパネライがムーブメント以外に注力しているのが、素材。
新素材にパネライはかなり投資しています。
最近の素材で言うと、パネライコンポジット、カーボテック、そじてBMG。
パネライコンポジットはアルミニウムから生成された特殊なセラミックで、通常のセラミックとは異なるセラミック。
詳しい科学的なことはわかりませんが、そういうセラミック素材。
カーボテックはカーボン素材と有機ポリマーの複合素材で、硬くてとても軽い。
オーバーホールって3年から5年と言われていますが、それって本当なのでしょうか? まあ目安ということなので、時計 …
両方とも黒いのが特徴。
同じ黒でも素材感が違う黒で、ステンレスモデルとくらべても、お互いに比べても、全く違った感じが楽しめます。
そしてBMG。
これは全く聞いたことがない素材。
実はこの素材はガラス。
アモルフォスと呼ばれる金属ガラスで、規則正しく配列する通常のガラス素材とは違い、
不規則に原子が配列するので厚みのある形状を形成することが出来る。
その上、成型や加工が簡単なので、製品などのモノづくりをする上で非常に有用な素材。
東北大学によって1970年代に実用化された素材で、現代社会の中核を担う素材になっています。
BMGと呼ばれる素材はあまりなじみのない言葉ですが、
耐蝕性、耐摩耗性などにもすぐれ、時間が経ってもその姿を変えない、経年劣化しない素材としてパネライは技術投入しました。
そのBMGを使用したルミノールサブマーシブルが2017年に登場しました。
PAM00692と呼ばれるモデルで、
見た感じ、どうみてもアッチャイオ。
これがアモルファス(非結晶のこと)の金属ガラスというのだから驚き。
たしかにガラスなら腐食しないしかなりの長いあいだその状態を維持します。
そんなBMGをケースやリューズガードやベゼルに使用したサブマーシブルが2017年のジュネーブサロンでお目見えし、
気になっていた方はかなり多いんじゃないでしょうか?
さて、カーボテックと同じくらいすごい素材をしようしている今回のルミノールサブマーシブル。
新素材を使用しているにもかかわらず、限定品ではありません。
通常の製品ラインナップに並ぶモデルなので買いそびれなんてことも当分はありません。
おそらくこの素材はこれからどんどん他のモデルにも採用されていくはずです。
耐蝕性にすぐれ、耐久性、堅牢性、などにも優れたパネライの新素材。
ダイバーズモデルにもぴったりだ。
今回の金属ガラス素材は耐蝕性に重点をおいた、ステンレスの代わりになり得る素材。
パネライコンポジットやカーボテックとはまた別の方向性を持った素材なので、
あらたなバリエーションが増えてくるはず。
通常のモデルのルミノールやラジオミールにBMG-TECHをじゃんじゃん採用して、経年劣化のない腕時計をどんどん作ってほしい。
そうなると今度は中古価格の上昇が見込めます。
見た目で劣化していないということは磨きも不要。
いつまでも綺麗な状態を維持できる腕時計は新品じゃなくても良いわけです。
そうなると買取価格も中古相場も平均して上昇していくんじゃないかなと思ったわけです。
ロレックスがそんな感じになっていますからね。
まだ先のことはわからないですが、このBMGとよばれる金属ガラス。
用途はかなりありそうです。
あとパネライが次にどんな素材を生み出すかも結構楽しみ。