
Cal.4030とCal.4130の違いはけっこうある。
まずその背景がすでに違うのは皆さんもご存知でしょう。
世界で初めてクロノグラフ機構付きの自動巻きムーブメントを作ったゼニスが誇るエルプリメロ。
それを搭載していたRef.16520。
搭載するにあたり、ムーブメントにかなりの変更を加え、
独自にデイトナ仕様に変え、精度や耐久性に関していろいろモディファイしている。
例えばエルプリメロを有名にした毎時360000回というハイビート。
1秒辺りの振動数は10回。
10回/秒 x 60(秒) x 60(分)= 36000/時
これを毎秒8回の振動にデチューンしたロレックス。
4/5倍だから毎時28800振動。
テンプの径も大きくなり、マイクロステラナットをテンワの内径に搭載するなど、
いろいろ、精度、耐久性、メンテナンス性を向上させている。
で、この変更を加えたムーブメントをCal.4030と名付けた。
2000年に2世代前の新型Ref.116520の登場で完全マニュファクチュール化したロレックス。 それ以前は他 …
こちらでもう少し詳しく書いているので良ければどうぞ。
image by www.cool-auction.net
このCal.4030は1987~2000年までのRef.16520全てのデイトナに搭載されている。
エルプリメロムーブメントということでファンからの指示が熱い。
当時、新品で68万円で買えていたデイトナRef.16520が今では中古でも100万円はする。
なんてこった、オーマイガー
だ。
次に登場したデイトナRef.116520はリファレンス名が似ているが中身は全然違うムーブメントが入っている。
ゼニスのエルプリメロ脱却を謀りたかったロレックス。
Ref.116520が登場した2000年をさかのぼること10年。
1990年頃にはすでにRef.116520に載せる自社製ムーブメントの開発に取り組んだ。
Ref.16520の誕生が1987年だから、
ゼニスからムーブメント供給を受けて数年でロレックスはすでにその構図から脱却したかったのである。
これでもか!
とこだわるロレックスの時計作りの姿勢を見る限り、
全て自社で一貫して完璧なマニュファクチュール時計を作りたかったのだと思う。
公式には何も発表しないロレックスのことなのではっきりしたことはわからない。
が、
そこがまたミステリアスでロレックス研究家たちが魅了される部分なのだろう。
小さなディテールの違いを見つけ出し、それが価格を大きく左右する。
これもロレックスが何も語らない姿から反映しているのも事実のようだ。
さて、話をCal.4130に戻そう。
Cal.4030との違いは今お話した、全て自社で作ったムーブメントであること。
と、
クロノグラフ機構についての違い。
Cal.4030ではクロノグラフに関わるパーツがムーブメントの裏と表に存在していた。
水平クラッチというやつだ。
それを裏面のみに配置することに成功し、伝達効率をあげることに成功している。
というのはクロノグラフのスタート及びストップボタンを押してからのタイムラグがより少なくなったこと。
遅れが生じないのでより正確な計測を可能にしている。
さらにテンプを支えるブリッジもシングルからダブルに変更されている。
2005年からロレックスがいくつかのモデルに搭載し始めたというブルーパラクロムヒゲゼンマイもデイトナにも採用し始めた。
いつ頃からパラクロムヒゲゼンマイに切り替わったのかは定かではないが、
この変更により、
耐磁力性能、温度変化などに強くなった。
より精度が向上するというわけだ。
因みにパラクロムヒゲゼンマイとは、
ニオブ、ハフニウム、ジルコニウムの合金のこと。
もうひとつ。
スモールセコンドと12時間積算計の配置が逆になり時計のデザインも変わったこと。
スモールセコンドはやはり6時位置にあった方が気持ちが良い。
しかし、エルプリメロ搭載のゼニス社のクロノグラフ時計を見てみると、
エルプリメロモディファイのムーブメントを搭載したRef.16520と同様、スモールセコンドはやはり9時位置にある。
ゼニスにはやはりゼニスの意地があり、
9時位置で開発したスモールセコンドを世の流れによって6時位置には確かに変えてほしくない。
ゼニスのおかげで発展した機械時計のクロノグラフ事情。
ロレックスが唯一認めたムーブメントがエルプリメロなのだ。
Cal.4030、Cal.4130と変更版ムーブメントから自社製ムーブメントに移行はしたが、
やはりゼニスのDNAはいまだに宿っている気がする。
デイトナのRef.16520については先日熱く語ったわけですが、 新型デイトナの登場でヒートアップする過去のデ …
デイトナにだんだんとやられてきています。 デイトナは僕たち時計好き男子の心のふるさと的腕時計でw というのはあ …
さて、 前回2回にわたってデイトナRef.16520の希少なモデル、 インダイヤルの逆6や、 3種類のベゼル、 …
こちらの記事でもRef.16520のディテールなどについて書いているのでよろしければどうぞ。
デイトナ Ref.16520
デイトナ Ref.116520
デイトナ Ref.116500LN