
時に腕時計には時計本来の良さよりも、宣伝活動や見せ方、魅せ方の方が重要となってくることがあります。
車だってそう。
車として他社の車と比べると劣ってはいますが、見せ方がうまかったり、持つ喜びを与えるようなステータス化を図った戦略がうまかったりするとユーザーは購入するのです。
広告や宣伝にかけてはウブロはその辺、最高に上手で、有名人を起用した戦略は確実にイメージアップにつながっています。
ロレックスはその辺、ウブロとは少し対照的で、ごり押ししないんですが、自社の腕時計が完全にステータス化しているところを生かして、より高い次元にある腕時計だということを静かにアピールしています。
腕時計の中では神格化しているので放っておいても売れるんですが、時計作りには決して妥協しませんから、ロレックスのナンバーワンの賀状を崩すことは他社がどんなにアピールしても不可能でしょう。
ただ、ロレックスにもそういった感じで腕時計をアピールする時代がありました。
1955年に誕生したGMTマスターがそう。
サブマリーナで海を制し、エクスプローラーで陸を制したロレックスが後れをとっていたのが空の航空時計。
ブライトリングがその分野で大きな存在感を示していたし、ロレックスには空の腕時計というものが存在しませんでしたから、新たにその分野を開拓する必要がありました。
1952年にロンドンとヨハネスブルグ間の旅客機の定期運航が就航し、時代は海外旅行という流れになっていきました。
その翌年パンナム航空からパイロットのためのローカルタイムとホームタイムの両方を表示する腕時計を開発してくれとロレックスは依頼されます。
2016年はデイトナの年でした。 2000年に発表された前作のデイトナ Ref.116520から16年、ようや …
GMTマスターが誕生した経緯はこちらに書いているのでよければどうぞ。
さて、このGMTマスターが誕生してからは、ロレックスはパイロットを宣伝に使用しました。
パンナム航空はロレックスの新モデルGMTマスターを公式時計として使用していましたから、ロレックスもパイロットを活用した宣伝活動をバンバン行い、当時まだ憧れであった海外旅行やエリート職種であるパイロットなどのイメージからもGMTマスターはある種のステータスウォッチとしての地位を確立していきました。
初代GMTマスター 18KYG Ref.6542
image by www.christies.com
これは初代GMTマスターの18Kイエローゴールドモデル。
2代目GMTマスター 18KYG Ref.1675/8
そしてこれが2代目のモデル。
初代と比べて大きな違いはリューズガードがついている点。
当時から早くも18Kモデルを発表していたロレックスですが、初代モデルにまでゴールド素材を使用しているんですね。
ロレックスはちゃんと先を見据えて18金仕様を発表していたんですが、ロレックスの目論見は、GMTマスターシリーズがパイロットを起用し、海外旅行をテーマとしている腕時計であることから、時計へのイメージが高級なもので、富裕層を狙ったステータスウォッチになるということが分かっていたからです。
後発的なシリーズであるGMTマスターですが、サブマリーナの回転ベゼルやエクスプローラーIの技術などを生かして作られたこのシリーズは、誕生当時からとてもつない人気で、富裕層からもかなり厚い支持を得ていたという。
すでロレックスブランドが確立していた当時ですが、GMTマスターの誕生はそれを確固たるものにしていきました。
サブマリーナやエクスプローラーよりも先に高いステータスウォッチとしての地位を得、現在でもロレックスの基幹モデルとしてめちゃくちゃ人気です。
2018年に誕生した、新作GMTマスターII Ref.126170BLROの人気の高さがそれを物語っています。
基本デザインを変えないロレックスのスタイルもまた全モデルが廃れない理由のひとつになっています。
というわけでですね、ロレックスにも大々的に宣伝活動していた時期があったというお話しでした。
1950年代はふり返ってみるとなんだか生き生きしているような気がします。
現代でも当時のファッションやスタイルをどん欲に取り入れている人も多く、当時へのあこがれが強い人もいるみたい。
ロレックスのGMTマスターが生まれたことの夢のある感じが腕時計からも感じられるようです。