
機械式腕時計の仕組みは自動巻きなら巻き上げられたローターで1番車の香箱にエネルギーを蓄えるのが最初です。
香箱と呼ばれるところにはエネルギー用のゼンマイが巻き上げられ、そのゼンマイのエネルギーを小出しにする形で最後のテンプが徐々に巻き上げられた香箱のゼンマイを開放していきます。
そのエネルギー開放と時計の精度を担っているのが最後のテンプの仕事なんですが、ゼニスはこのテンプの振動数においても有名で、36000振動/毎時といえばエルプリメロが真っ先に挙げられます。
7200振動/毎時=1ヘルツという振動数を数えるわけですが、このゼニスのハイビートなエルプリメロは36000振動/毎時=5ヘルツという感じで計算されます。
最も一般的なテンプの振動数が28800/毎時なので4ヘルツということになります。
ところがゼニスが発表したコンセプトモデルに15ヘルツという機械式時計にしてはかなりの振動数を誇るモデルが発表されました。
ゼニス デファイ ラボ Ref.27.9000.342/78.R582
こういうモデルなんですが、まず見た目がすごい。
ケースがすごい。
このケースはロイヤルオークのフロステッドゴールドみたいにゴールドをダイヤモンドでぶったたいて作るやつみたいなんですが、独自の技術で作った新たな金属素材アエロナイト。
アルミニウムより1.7倍軽いらしい。
さらにチタンよりも2.7倍軽いw
更には、カーボンファイバーより10%程度軽いらしい。
翼を授かったようなケース素材だ。
しかしですね、本題はケース素材じゃありません。
単結晶シリコンで作られた一体構造の新型オシレーター
これ、なんだかわかりますか?
このシリコンで出来た一体型のパーツがこれまでのテンプとヒゲゼンマイの役割をしているらしい。
このパーツが15ヘルツ、つまり108000振動/毎時というかなりのハイビートを刻見ます。
これまで金属素材などで何点もの部品を使って作られていた調速機が1体形成のシリコンに収められ厚みも5ミリから1/10の0.5ミリに抑えられています。
もちろんかなり軽くなっているはずです。
振動数は3倍になっているのですが、パワーリザーブがエルプリメロに対し10パーセントも向上しているのはそのため。
金属部品を使用しないし、摩耗する部分もないので注油は不要です。
つまりメンテナンス性もかなり高い。
さらにすごいのが、精度。
ロレックスの販売する腕時計のすべてが日差±2秒以内であるのに対し、新たなシリコンオシレーターを使用したゼニスのデファイは平均日差0.3秒w
これが一般化したら時計業界はいったいどうなるんだろう?
ケースサイズは44ミリ、パワーリザーブは60時間、この辺は一般的です。
というわけで、調速機の基本構造を覆す発明ですが、これからこれが使用され広まっていくのかどうか楽しみです。
ゼニスの開発力はやっぱりすごかった。
ちなみに世界限定10本しかないモデルだそうだ。