
僕が初めて機械式時計のシースルー文字盤を見たのはまだ10代後半か20代前半の頃でした。
今ではかなり一般的になっている文字盤もシースルーの腕時計。
裏蓋がシースルーになっていて、自動巻きや手巻きの機械が覗けるのはすでに一般的に普及していましたが、文字盤までもがシースルーになっているモデルはあまりありませんでした。
僕がまだ知らなかっただけなのかもしれませんが、当時は今よりもシースルーダイヤルは圧倒的に少なく、各社そういったモデルの腕時計は出していても数えるくらいしかありませんでした。
今では文字盤だけじゃなく、ムーブメントまでシースルーにする動きもあり、リシャールミルなんかはムーブメントの作りがブリッジに輪列を固定する仕組みでいらないものをそぎ落としていたりするので、シースルーすぎて、腕が見える時計になっています。
まさに腕時計w
さて、そんな当時を思い出したのは1本のブレゲを見たからでした。
ブレゲ クラシック トラディション Ref.7027BB/G9/9V6
このモデルが僕が初めてシースルーの文字盤が存在することを知った腕時計でした。
ブレゲだったんですけど、かなり衝撃的でした。
当時はまだこの腕時計が160万円台で買えていましたが、今では200万円を超える価格になっています。
そりゃあそうなんですけど、当時はまだ機械式時計の人気が今よりも低く、ゴールドの相場ももしかしたら今とは違っていたのかもしれません。
日本ではゴールド素材の腕時計を敬遠する傾向にありますがそういった流れも最近では変化しています。
さてそんなクラシックトラディションの7277系なんですが、12時位置に時計が付いています。
これが文字盤と呼べるものなのかもしれません。
かなり縮小されたデザインであるため、機械が丸見えなんですが、そこがこの腕時計の魅力であります。
テンプの径と同じ大きさの歯車を並べ左右対称にバランスよくムーブメントを見せていますが、右側にあるのがパラシュート機構と呼ばれる耐衝撃性の高い機能を持ったテンプ。
ブレゲが開発したという衝撃に強い機構で現在の耐衝撃機構の元になっているらしい。
パラシュート機構とは、針のように細かったテンプの軸を円錐状にし、それに合うような受け皿上の部品で支えるという機構で、それまで強い衝撃で折れていたテンプの軸が折れなくなりブレゲの名声はどんどん上がっていったそうな。
実際にブレゲさんは自分で生み出した耐衝撃機構を載せた腕時計をわざと落としても動き続けることを実演して見せたらしい。
パラシュートのように衝撃を吸収することから名づけられた耐衝撃システム。
ブレゲさんがいなかったら衝撃を吸収するシステムはもう少し遅れて登場していたことでしょう。
しかも違った形で出ていたかもしれません。
インカブロックなどの耐衝撃機構が有名ですが、それらの礎を築いたのが天才時計師ブレゲさんなんですね。
この1本も当然パラシュート機構が載せられたモデルで、ちょこんと設置された文字盤にはブレゲらしさが凝縮されています。
より機械を見せるタイプの珍しい1本ですが、ブレゲ針、ローマンインデックス、コインエッジなどを使用して古典的に仕上げられています。
このモデルにはピンクゴールド素材のものもありますが、そちらもおすすめですね。
クラシック トラディション Ref.7027BR/G9/9V6
というわけで、僕が初めてシースルーダイヤルを見て衝撃を受けたのがこのブレゲのクラシックトラディションでしたが、その衝撃はパラシュート機構でも緩和できないくらいのショックだったのです。
うまいw